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読みきり:題【わがままに】

【わがままに】 作:小織 悠


「二人ともおはよっ」

元気よく挨拶をする彼女の名前は一条 祐子。
今年新しく高校生として学校に行くことになった。
たくさん勉強してやっとの思いで進学校に入学できた彼女にはふたりの幼馴染がいる。

眼鏡をかけ、少し固い性格に思える大人しい性格の女性、神蔵 愛理。
そして裕子の隣のアパートにおじいちゃんと二人で暮らしている男の子の仲川 亮だ。

幼稚園・小学校・中学校ずっと三人は一緒だった。
周囲の友達も三人の仲の良さにはついていけず、また、入り込むことなどできない所謂仲良しトリオである。
三人は一緒の高校に入学した。
今日はその記念すべき入学式である。

間に合うように三人は待ち合わせをし、一緒に登校しようと決めた。
高校の制服が似合っているだとか、クラス一緒だといいね。
とかそんなことを話しながら学校へ向かった。
入学早々に、女二人と一緒に気恥ずかしそうに嫌々登校する亮は、すこし後ろを歩く。

入学式も終わりクラス名簿が張り出されていることに気付いた愛理がいち早く駆け足で見に行った。
すぐに戻ってきた愛理は、はにかんだ顔で言った。

「……残念」

亮と祐子は運よく同じ3組となったが、入試の成績の良さから愛理は特進クラスで1組だった。
亮が愛理にため息をついて言った。

「まったく……お前は試験で手を抜いとけよ。俺と裕子は、おまえより馬鹿なんだからさ」
「なによーそれ」

愛理はふくれた表情で言い返すのだった。

その日クラス説明の後、3組の教室を出た裕子と亮は1組へ愛理を迎えに言った。
亮が愛理を教室の入り口から呼ぶ。
愛理は楽しそうな笑顔で二人に近寄った。

「迎えに来てくれたんだー。今から帰るの? わかった。用意してくるね」

愛理はクラスの子に仲良く話しているようだ。

「神蔵さん、もう帰るの?」
「うん。ごめんね、幼馴染が迎えに来てるの」
「いいなぁ。私同中のひとだれもいないや」
「うん。またねー」

挨拶をしてクラスを出る愛理。
仕度をして教室を出てきた。
なにげなくいつもの帰り道、裕子は愛理に問いかけた。

「裕子は、もう友達できたの……?」

愛理は笑顔でうん! と答えた。
良かったねと言いながら3人は一緒に帰る。

それから一週間が過ぎて、高校にすこし慣れてまたいつものように裕子と亮は愛理を迎えに行った。

「愛理、迎えに来たよ」
裕子と亮が口をそろえて呼ぶ。
でもその日愛理は一緒には帰らなかった。

「ごめんね。クラスの子に放課後の勉強会、誘われてさ……ほんとごめん」
そういうことは何回もあった。
理由は、なぜか愛理に多く。先生に仕事を頼まれてとか、クラス委員だったりとか。
愛理は勉強ができて、少し大人しく鈍感だけど優しくて周囲からも人気があったからだ。

しかし、入学式から3ヶ月が経とうとしていて、1学期もそろそろ終わりが来るころ。
今ではほぼ、愛理が一緒に帰ることがなくなっていた。
気がつくと放課後、愛理は他の友達と帰るようになっていた。
亮はもともと男の子だったし、なかなか以前のように裕子との距離をもつかめずにいたが、不安そうに二人を見ているような光景。

そして、ある朝、裕子は愛理に言った。

「……最近バラバラじゃない?」

何のことだかわからない愛理だったが、愛理も裕子に話があるようだった。

「裕子さ、友達作んないの? あんた可愛いしすぐ作れるでしょ? 作りづらいなら私のクラスの子紹介してさ」

愛理がまだ話を言い終わらないうちに裕子は愛理に激怒した。

「なんで……ひどいよ」

その言葉にびっくりした愛理が戸惑いながらも裕子に言う。

「ど、どうしたのよ……裕子」
「いいよ! 愛理なんてもういい!」

愛理は下を向き・・・何も言えずに泣いた。

「なんで? ……」

愛理に答えることなく裕子は愛理をおいて、走って学校へ行ってしまった。
亮は二人をじっと見つめているだけだったが、そのまま泣く愛理のそばにいながらも。
その涙が消えることは無くそのまま学校まで一緒に登校した。

その日の放課後……。

亮が裕子に話しかける。

「迎えに行こう。一緒に帰ろう」

今朝のことで頭がいっぱいの祐子は震える口を動かしながら答えた。

「いかない。愛理には新しい友達いるから」
「お前なぁ……」

そう呆れたようすでいう亮に、裕子は亮を置いて先に帰ろうと教室を後にした。
亮はすぐに後を追った。
そして視聴覚室の前の廊下で裕子を引き止める。

「裕子! 不満あるならちゃんと言えばいいだろ……。泣いてたぞ、愛理」

裕子は亮のほうを向き直ってうつむいた。

「不満だらけだよ……でも、どうしたらいいの? 大好きなのに……愛理の友達作るの邪魔するなんてできないもん」

放課後の誰も通らない廊下に祐子の声は響いた。

「私の居場所……もうないんだもん。愛理の横で亮の横で3人一緒だったんだもん」

亮には痛く裕子の気持ちがわかるのだった。
そしてそれと同じくらい愛理の気持ちも。
裕子は泣いた。悔しいのだろう。つらいのだろう。勇気がないのだろう。

「三人でいるのがね、すごい……すごい好きなんだ……もん。いつも我慢してる」

彼女はうつむいて動かない。
その瞳のあふれんばかりの涙が今にも冷たい廊下の上に落ちてしまいそうだった。
そこに見えるはずの青白い廊下はいまの裕子には、その本来の姿は見えない。

亮は黙ったまま裕子の後ろまで歩き言った。

「俺も一緒だよ。女とつるむには男友達の世界もすごく大変だよ。でも二人の辛いときは誰も先にわかる。る。泣くなよ。その涙は俺と愛理のために裕子が流したものなら。見なくてもちゃんと伝わる。迎えに行こうぜ。いつもみたいにさ」

窓の外で夕日が落ちていく中で、亮の後ろで廊下に雫の落ちる音が聞こえた気がした。

「でも私……嫌な女だよね。愛理の事、いらないって言っちゃった。自分のわがままで愛理をいらないって」

亮はそのまま廊下に座った。そして少しの沈黙の後、少し笑って軽い言い方で亮は言った。

「そんな事いったか? 俺には聞こえなかったけど?」

裕子がすかさず答える。

「言ったよ。愛理……泣いてたもん」
「泣いてたの知ってて走っていったのか?」
「うん。見てられなくなっちゃって……自分が嫌で」
「で? どうしたいんだ。傷つけて……自分で傷ついて……自分だけで反省して。それで終わりか? ……なぁ。俺思うんだけど、あいつ待ってるんじゃないか? ……愛理はそういうやつだよ」

静かに亮は祐子の震えている肩を優しく抑えた。
なれない様子で照れ隠しするように亮は裕子の頭を撫でる。

「……亮ってそんなに背のびたっけ……」
「ほんとお前ら俺のことみてねぇのな。わはは」

黙り込む裕子に亮は優しく言うのだった。

「お前ら危なっかしいよ。目の前で泣かれたら俺、お前達を放っておけないじゃん……」

少し笑って裕子は再び涙を拭いた。
それから1組の教室に足を運んだ。そこには誰もいなく愛理はもうそこにはいない。

裕子はさびしそうにつぶやく。

「ね。いないんだよ……結局、嫌われたんだよ私。はは……」

落胆する裕子に亮は教室の窓の外を見ていった。

「いるよ、やっぱ大事なんだなぁ。裕子の事。あいつも……」

亮が見たのは校門でうずくまっている愛理だった。放課後授業が終わってすぐ
いや、それよりも前かもしれない。ずっと校門前で泣いていた。
話しかけるクラスメイトには必死で笑顔で声をかけて、必死で心を閉じては開いて。

亮は、裕子の横でめんどくさそうにため息をついて言った。

「あれさ、お前の事待ってるんだろ?」

すぐに裕子は校門まで全力で走る。
大切な親友の待つ場所へ。
幼馴染というずっと一緒だった思い出を互いに持った親友なのだ。

「ごめんね、裕子。ずっと仲良しの親友でいようね」
「うん」

どちらが正しいわけでもなく
どちらの感情もゆるぎない愛なのだから
答えが出るまでそれを訴える人に伝えなければならないのだと思う。

『遅いよっ亮、一緒に帰ろっ』

間違いなく結果がどうであれ。
解決しない事であふれてどうしようもなくなったとしても
二人が笑顔でいるなら、それはつながってるって事だから。

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Comment

牡蠣様>
ほんと、すみません。
気にかけていただいて。台風などはどうでしょうか。
私は、すこし北海道に慣れました。

少々ありふれた内容であれですが。
嫉妬心とか女の子同士の大事な友達関係を
書きたかったので^^

読んでくれて嬉しいです。
もう少し落ち着いたら、書きますよ!
第2章!ぜひ読んでくださいね!!

2011.09.22 (Thu) | 小織 悠 #wVIA9fBs | URL | 編集

お久しぶりです~

こんにちは。
小織さんのお話、久しぶりに読めて嬉しかったです♪

前からの友達と、新しい友達。最初の頃は、うまく両立するのが難しかった覚えがあります。
どちらも大切にしようと思っていても、些細なことで「あっちを優先してる」と思われてしまったりするんですよね…。

長期出張中とのことで大変かと思いますが、ご無理のない程度でまた、作品楽しみに待っています(*^-^*)

2011.09.20 (Tue) | 牡蠣ひろみ #- | URL | 編集

grhoさんへ>

ああ…満たされそうです。
ためになる感想いただけることもまた本当に嬉しいです。
うわぁ。ほんとにこんな作品を最後まで
読んでいただけたことがうれしい。

ぜひまたあそびに!
リンク張りますね^^
こちらこそよろしくおねがいします。

2011.09.20 (Tue) | 小織 悠 #wVIA9fBs | URL | 編集

はじめまして

駄文カフェのコメントから飛んでまいりました。
grhoと申します。
作家を目指すお二人、ということで、なんだか共感(自分自身、そこまでまだ作家になりたいという夢が定まっているわけではありませんが)したので、ぜひ足跡を残そうと思いました。
というわけで読ませていただいたので、感想をばひとつ。
ちょっとスイッチが入ってしまったのでやたらと長くなっています。すみません……。

【感想】

内容としては、結構いろんなところで読んだことがあるような、そんな感じでした。
とはいえ、それを言い出すと、ほとんどの作品がそうなってしまうので……それはおいて置きます。

そして、その内容についてですが、イマイチその感動が伝わってきにくかったかなぁ、と思います。
その理由の一つとして、この物語のなかで主にメインとなるのが裕子で、その心情がテーマとなっているように思うのですが、それが伝わってきにくいことかもしれません。
改善案としては、この話を「一人称」にしてはどうでしょうか。
裕子の心情がメインだと思うので、そこをクローズアップするには一人称が最適だと思うのです。
また、人数もそこまで大きくないですし、特殊な設定があるわけでもないですから、むしろそちらの方が物語に会っているような気もします。

文章については、上に書いてあることと同じで、ちょっと一歩引いている感じの落ち着き具合が、逆にこちらへと物語のテーマを伝えるのを、抑えているような気がしました。
つまり、個人的趣味としては、一人称で、裕子視点。そこでガガガッ! と来てほしかったなぁ、と思いました。

【言い訳】

――以上は、完全に自分の好みに基づいた感想ですので、適度にスルーしていただけるといいと思います。
初めてでこんなことを書きやがって、とコメントを消されても納得します。
また、これは完全な言い訳ですが、自分自身ここまで書いておいて、自分でできるレベルかというと、全然違います。
そもそも、自分はまだ一人称しか書けないですし……。
レベルでいえば、完全に小織 悠さまの方が上だと思いつつ、でも作家希望ということでむらむらと来てやってしまいました。やれないことを求めてすみません……。

ではでは。
なんだかんだ言いつつ、やはり完成度の高い作品だと思いましたし、ほかにもたくさん作品があるようなので(しかも)そのジャンルも、自分の好みとばっちしフィットでした)リンクを貼らせていただきたいのですが、よろしいでしょうか?
ぶしつけに失礼なことをたくさん申しまして、すみません。
ここらで、退散いたします。
ではではっ!

2011.09.20 (Tue) | grho #q82EIZRs | URL | 編集

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