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【別れの値段】22 話

第22話【この店を始めた理由】



――これは、私の思い出のなかだけの物理的に存在しない話

大事に取っていたアルバム、ビデオ、大好きだったきぐるみ、何一つあの現場から出てくることは無かった。
激しく燃える火と匿う異臭は生々しく残る。あの時の意識が薄らぐ中でもはっきり目に焼きついた光景を覚え、私は些細な焼けどのみで命を得た事を悔やんだ。

逃げ場を失うほどに生き場を無くして気がつけば病院。動けず聞こえず治療を終えて私に聞かされたのは、全部なくなったという後日談だけ。
放り投げたタバコの火が路地を焼き、庭を伝い家を焼いたのである。
残された私は、行き場をなくして、通っていた高校にも通うことができなくなった。残ったのは遺族の保険金と、膨大な父の相続遺産。不自由のない幸せな家庭だったの。本当に満たされていた家族だった。
拓也君。本当に、聞いてくれる?

これはね、わたしが中学3年になったときの話。

------------------------------------------


「千佳姉ぇ!」
「どうしたの? 拓也」

呼ぶ声に私は答える。
聞いててちょっと驚いたかな? そう実は、拓也君と同じ名前なの。
私の弟。峰岸拓也。

「姉ちゃん、ふざけんなよ!」
「なになに? どうしたの?」
「なんで姉ちゃんの下着が俺の部屋にあるんだよ」
「いいじゃない。姉弟なんだから」

2つ下の弟は思春期。私はなんだかお姉ちゃんのまま大きくなっちゃって、反抗期とかそういうものにもちょっと疎いくらいにのんびりとした思考の人生を歩んでいた。
おおざっぱな姉に小生意気な弟。良くありげな姉弟だった。
再婚した母は、社長の妻となり、歳の差ある再婚であるが、第二の人生を歩んだ。私も弟もそれを心から祝福した。
だってそうでしょう? 相手はお金持ちだし、いままでのなんともいえないシングルマザーの貧乏暮らしがあっという間に世界を変えて違うものになった。最後まで私は、その人をパパとは呼ばなかったけれど、それに対して少し後悔もしている。

「なぁ。千佳は欲しいものあるかい? もうすぐ受験で大変になるだろう?」

新しいお父さんは、本当の娘でないわたし達にかなり甘かったが、自立的な気持ちを持っている私はそういう魅了を覚めた目でみている。

「とくにないわ。ママになにか買ってあげて」
「まぁ、まだ中校生だしな。高校になれば欲しいものや興味も変わるだろうさ」

少しお金でなんでもなる。的なところはあるけど、心は優しい人だった。
そういう物欲の魅了に大きく振り回されたのは拓也のほう。でも、すごく可愛いんだとおもう。そっちのほうがとても可愛いのだと思うの。
素直にわがままを言って、困らせて。自我を開放していた弟は、とても嬉しそうで、またそれを喜ぶ母も近くで見れた。素直に生きれる弟のほうがいつも羨ましかった。そして私から見ても弟は、とても可愛かった。

「拓也、今度買い物付き合ってよ」
「一人で行けよ」
「お願い!」
「……何買う気?」
「お庭に花植えるのよ」


言葉は悪いけど、弟は優しかった。重いプランターを持ち、めんどくさそうに花を持ち、なんだかんだで一緒に花を植えた。

「この花、なんだっけ?」
「すみれよ」
「あれ? パンジーだろ?」
「あは。そうともいうわね」
「ややこしいなぁ……めんどくさいし」

一つ一つの思い出は鮮明に覚えてる。
移り住んだ家は庭が広くてね、私は花が好きだからいっぱい植えたいなって思ってた。
隣に拓也がつまんなそうに如雨露で水を吹いていて、それがすこし涼しく横に流れてきて、あぁ。もうすぐ秋なんだなぁって感じるようにヒグラシも鳴いて、すごく気持ちがよかった。

紫のすみれが園芸プランターに佇んで、ゆっくりと学校の休日が終る。
こんなかんじで夢もなく私の人生はゆっくり流れていって、ママとパパにお休みを言って成長して、だんなさんをもらって、可愛いお嫁さんになり、平凡な人生を送るんだろうなぁっておもってた。

「千佳、拓也」
「どうしたの? ママ」

ある日、私と拓也はママに呼び出される。それはたいしたことではなかった。
日々ゆっくりと暮らしていたママが妊娠をしたのだ。拓也は戸惑ってはいたが少し嬉しそうでもあった。

「おめでとう。ママ」
「ありがとね。千佳」

庭は綺麗に微笑み、それは幸せといえるものでした。
しかし、高校入学して半月。とうとう、あの事件が起こる。

深夜寝静まってからの事故。犠牲者は3名。子を身ごもった母と社長の父。そしての弟。
泣く暇なんか無かった。気がついたら火の海で、私を守るように弟。弟を守るように母。
母を守るように父。そして、私は守られた。断片的に思い出すのはそれだけ。

何億という残産を受け取り、一人病室で私は呆けた。
お金がいくらあっても満たされることはなかった。新規通帳を渡され親戚は、それ欲しさに尋ね周るようにしか見えない。一緒に住まないかと誘ってくれた親戚も多く居たのだけれど、私は一人で居ることを望んだ。
最初に家を建て直す話がでたけど、土地ごと売って、私は一人この街に移り住んできたの。

この街は、大きな通りも少なくて、なんだか空が高く感じて図書館も近くにあって好き。
一人で住める様な小さいマンションの一室を買い、住んだの。転入した高校に通い、薄暗い私生活の私は、友達を作ることすらせず、ひっそりと孤独に生きた。
燃え残った遺族の処理は叔父にお願いした。いつでも頼っておくれといい叔父さん。
できるだけ近くのお墓がいいなってたった一個だけわがままを言った。
火傷のひとつでも残っていれば私は、癒されたのかもしれない。

――どうして……どうして……私だけ……

「おぃ! 峰岸」
「……」

先生の呼ぶ声。

「峰岸。進路はどうする気だ? お前は成績も悪くない進学もできるだろう」
「……いえ」

高校卒業まで心が無く過ごした私。しばらく本当の笑顔で笑ったことはなかったわ。
先生に白紙の進路予定を渡し、受験をせずに高校を卒業し、あらためて一人きりなんだと感じた。
物の少ない一室に、仏壇一つ無く、無造作に置かれた通帳とすみれの花。

「そうだ……そろそろ植え替えてあげなきゃね……広いところがいいなぁ」

わたしは、すみれの花を持ちながら公園へ行ったの。
公園はとってもひろいところだし、勝手に植えてもばれないだろうって思ったから。
わたしが、すみれの花を植えているとある女の人が声をかけてきた。
名前も聞かなかったおばあちゃん。

「この花、なんと言ったかな?」

突然の背後の声。重なる弟の姿。
でも、居たのは、だいぶ歳をとっているおばあちゃんだったの。あったかそうな羽織を着て、散歩の途中だったみたい。

「早咲のすみれです」
「キレイね。すみれなんてひさしぶり」
「……」
「昔はいーっぱいここに咲いてたのにねぇ……」

哀愁を感じた。こんな感じでほっと話したのは久しぶりな感じがした。

「おばあちゃんは、この近くに住んでるの?」
「そうじゃよ」
「そっか~」

スコップで穴を掘り終わり優しくすみれをうつして土を盛る。

「あ。如雨露忘れちゃった…」

私がそう言うとね、おばあちゃんは、水に浮いていた平草で器用に器をつくった。

「年の功」

そういっておばあちゃんは、クククと嬉しそうに笑う。
私はそのあと一緒の公園のベンチに座って話したの。まったく見ず知らずの人とあんなに長く話したのは久しぶり。きっと私は話したかったのかもしれない。好きな花の名前を言い合ったり、おばあちゃんもなんだか孫と話しているかのように楽しそうだった。そんな話の中で一つでた話題。ちょっとした些細な事。

「おばあちゃんは、叶えたい願いってあるんですか?」
「願いかえ?」
「はい」

馴染んだ言葉にさりげなく聞いたおばあちゃんの夢。

「私はね、こんなに長く生きちゃったけどね、できることなら……別れなく死にたい」
「どうして?」
「誰だってそう。それを望んで精一杯に歳をとってな……残すものも残るものもいないことを人は最後まで望む」
「……」
「しかし、望んでも叶わないのが……別れじゃろ?」

そう言ってそのおばあちゃんは、クククと笑った。
去り際に言ったおばあちゃんの言葉。

「付き合ってくれてありがとう。別れなくまた会いたいもんじゃね」
「いえ……」
「そうそう。もしもそんな辛い別れを幸せに交換してくれるお店があればいいねぇ……あればもっと人は幸せなのかもしれないねぇ」

歩行車椅子を押しながら言い残して、ゆっくり歩くおばあちゃんの姿。
ただただゆっくりと歩んできた世界を踏みしめるようにゆっくり歩いていた。



続く:第23話【庭に咲くのは今も変わらず私の大好きな花】


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Comment

ほんまや!

結へ>
ひどい文にでごみん。修正しました。読み返すことなく黙々と描いてしまったので、反省。

2011.11.30 (Wed) | 小織 悠 #wVIA9fBs | URL | 編集

こちらの最初の方の文だけもう一度読んで修正しましょう。
言いたいことはつたわりましたが、ちょっと言い回しと言葉使いに違和感があります。

2011.11.29 (Tue) | 結 麻月 #- | URL | 編集

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