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【別れの値段】9話:+あらすじ

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【1章あらすじ】

主人公である僕は最愛の女性と辛い別れをする。
ぽっかりと心があいてしまった僕は、ただ、一日を無駄に過ごし時間を早める毎日。
彼女の記憶・関係が忘れられずにただ強がっているのだ。
ところが、ふといつものようにドライブをして時間をつぶしていると、珍しく通ったわき道に
見慣れない看板の雑貨屋を見つける。
気になる店員の女性と、その店の不思議な業務に興味を抱き幾度と足を運ぶ。
どうやら、この店は思い出のある雑貨を買取る専門店のようである。
突然に再度立ち寄る僕は、いきなり店の留守番を頼まれるが、その時絶対こないだろうと思った客が
来店する。来店した女性が指輪を売りに来たらしい。
ただ泣いて崩れるその女性の話を親身に聞いて自分のことさながらに真剣に彼女に答える僕。
話終わりなにかを気づかされたような、そんな満たされた感情の中、女性もまた店を後にした。
して、戻ってきた店員である千佳は、事情を話した僕に何かを感じたのか
僕は、唐突なアルバイトの誘いをされたのである。

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~2章:別れの値段



第9話【アルバイトを決めた日】



あの日。
僕がこの不思議な店のアルバイトを薦められた日。


「だから、ぜひあなたにこの店でアルバイトをしてほしいんです」
「えーっと……バイトっすか?」
「そうです。このお店私が一人でやってるんですけど、アルバイトが欲しかったんですよ」
「え? えっと、だって……そ……その」

おいおい、この店客ほとんどこねぇじゃん! と内心おもった僕。
思わずそれを口を滑らさないように口どもる。
就職は四月からだ。当分は出社の話は来ていないし特に課題を言い渡されているわけでもない。
アルバイト代は無いに等しいだろうとは思ったが、なにぶん彼女も無くし卒業までは暇である。
今の僕がこの店に興味があるのも本心だったので悪い話ではない。

「僕なんかでいいんですか?」
「はい!」

彼女はすごい嬉しそうな笑顔でそう言った。
あと、名前を聞かれた。年齢もだ。

「名前はなんていうんですか? あと年齢も一応」
「22です。今年大学卒業です。名前は柚木拓也といいます」
「拓也さん……ふむふむ。22歳。まだ若いんだ~。わたしの2個下だ」
「……まじ?」

そう言われてじっと顔を見つめる僕。
絶対この人は年下だと思っていたが、実際年上だと聞くと顔も少し端整に思える。
なんかこういう出会いもいいかなと、よこしまに気持ち高まる僕は少し照れる。

「あの、俺、4月から就職先あるんです。それまでですけど……ほんとうにですか?」
「はい。もちろん。期待してます」

一切、アルバイトが短期であろうがなんであろうが、年下だろうが嫌な顔一つしない人である。

「暇なんでいいですけど……シフトとかあるんですか?」
「えっと、毎日……好きな時間で」
「はぃ? 毎日やってるんですか? この店」
「そです。わたしも冠婚葬祭以外は、店じゃなきゃ近くの本屋か庭とかにいるので」

もう、こういう自由な状態が初めてなせいか、僕はどうしたらいいかわからなくなる。
アルバイトの根本を覆すようなフレキシブルなバイト形式に戸惑うだけだ。

「毎日、この店に来たくなったら来ればいいってことですか?」
「あはは。そうそう。たいへんなら休日だけでもいいんですけど」

無邪気に笑っていう彼女が逆に憎たらしく感じる所もあったのだが、いきなり店を開いた今日の彼女の行動を考えるとそういうところについてはなぜだか納得するほかない。

「でも、この店毎日人来るんですか?」
「ふふふ……秘密です」
「いやいやいや、怖いですって。その言い方は!」
「時給は、1200円くらいでいいですか?」
「あ、はい……せ、せんにひゃくえん!!?」

思わず机を両手で叩く僕。どんな収入源があるんだろうとまでは聞けない。
正直なんだかすごく怖かった。すごくすごく笑顔が怖かった。その部分に関して言うとだ。

「あの……まじ、歩合制でいいんで……」
「うふふ。はい」

こうして僕はこの店にアルバイトとして働くことになったのである。
店を出たのは、7時半をまわった頃。
また明日ねと車に乗って帰る僕を千佳は嬉しそうに手を振っていた。

業務内容はこうだ。
マニュアルは特に無い。来た客とどれだけの時間を過ごしてもいい。
かならず一人ずつ対応すること。そして最後に言われた一つの注意点がある。
それだけを千佳は念を押した。


――お客様が物を売りに来たときにその物に価値を付ける時ですけど
――何万、何十万円でもいい……場合によっては何百万でも……
――でも……真剣にあなたの心で聞いてその思い出の品の値段を決めてくださいね


と唯一笑みの無いまじめな表情で千佳は言った。
なんかスカウトされたように特別な気持ちで得意げに僕は家に帰る。
今日来た女性の話を聞いて救われた気持ちになったのは、彼女が僕と似た境遇だったからだろうか。
その夜、深くお風呂につかると何気なくやはり思い出す。
本来ああいう人に僕は、なんていったら言いのだろうと考えなおすのだ。
でも、不思議と話し終わった後のすっきりした彼女の笑顔は、寝るまで僕の瞳からは消えることはなかった。
明日、また店にいってみようと素直に思って僕は寝た。

そのときの僕は、まさか次の日にあんな客が店に来るなんて思ってもみなかったんだ。



続く:10話【店にやってきた珍客】

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