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【別れの値段】5話:好き過ぎた彼を想う

彼女は……話を始めた。
*********

あの時の静かな感じをまだ世界は覚えています。
別れよりも付き合えないことのほうが怖いそんな失恋の感覚を実は、気が付かないうちに感じていた3年前と同じ季節の事だった。

落ちていく夕日が一日の終わりを早々と私に告げる中に。
一日がもっと長ければいいのにと、私の高校最後の恋が始まります。

「あの……葦春さんは好きな人居ますか?」
「別にいねぇけど……なんで?」
「いえ、なんでもないでーす」

コンビニのアルバイトで知り合った2個年上の彼だった。
もうなんだか彼のことでいっぱいで
感極まって何回やり場のない苦しさを感じたか分からない。

「葦春さんは大学生なんですよね? 頭いいんですねっ」
「あはは。大学生って言っても馬鹿大学だからさ」
「そ、そんなことないですよ」

こんな続かない会話にさえ一生分の勇気を使うくらいの気持ちでした。
アルバイトも彼のシフトを意識してる自分。
彼が携帯電話を使っているときに、わざとらしく私も携帯を意味なく取り出したり
偶然を装って彼の近くにいつでも居れるように私はとにかく全力だった。

「わ、私、短大に受かったんです!」
「あ、まじ? おめでと! どこの短大行くの?」
「近くの都楽短期です」
「すげぇじゃん。じゃあお祝いするよ」
「ほ、ほんとですか?」

短大に受かったことよりも遥かに嬉しかった事。
隠し通すことなんでできなくて、子犬のように無いはずのしっぽをパタパタと振り
飛び跳ねて喜んだ。

周りのアルバイトの子達に言わせると
私が葦春さんを好きなのはもう明らかで、ぜんぜん周りが見えていないとか
公私混同だとか怒られたりもしました。

店長はすごく優しい人だったし私の恋を後押ししてくれているように
何時も笑って、ちゃんと仕事だけはしろよ。と私に念を押す。
学校はもうこの時期だから毎週水曜だけの登校でよかったし
車の免許は短大に入ってからでも取れなくは無かったのでアルバイトに専念。

……アルバイトというか、正確には彼に専念する日々。
本当に私の気持ちは明らかなのに彼は気付かないふりをするように
すごくすごくそれがじれったくてくすぐったくて、楽しかった。
私の気持ちを揺さぶる言葉がいっぱいなの。

2月が訪れ。
今にも雪が降るように天候は暗く暗く崩れているけれど
雪が降る前のこの空と景色は不思議と好きだった。
お客の居ない店内を確認しながら
私は葦春さんと裏にある控えの部屋で二人きり。
店長は、私に気をつかってか商品の整理へ。

「あの……葦春さんは……」
「あ! そうだ」

私が必死で話しかけようとすると彼はさっきまで読んでいた雑誌の一つの写真を指差して
私の小さな声をかき消す様に話しかける。

「これなんだけどさ!」

いつに無く葦春さんは私に積極的に近づいてくる。
それを心配そうに遠目に見る店長が楽しそうだ。
彼が指を指していたのは、小さな小料理屋だった。

「バイト終わったら暇? 一緒に行かない?」
「あ! ……えっと!」

あまりに突然な彼の誘いに私は心臓が飛び出るくらいにびっくりしていた。
外は静かに雪が振り出した模様。

「お、おめ、おねがいします!」

この後の予定なんてキャンセルキャンセル。
すべての私のベクトルを彼のもとへ。

優しく降り始めた雪の冷たさは
いつも以上に高鳴る鼓動の焚き立てる熱に解ける。

――よし! がんばるぞー!


続く:6話“好きだという事が好き”
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