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【別れの値段】 27

第27話【私とあなたの距離】




この世にもしも、けして消えない苦しみがあるとしたら……。
心の中に、終らない恋が存在している事だとおもう。
いっそ人間に希望や夢という願望が無ければわたしも解放されたのでしょうか。
心なんて無ければ、私はあの人をあの頃の笑顔を忘れられるのでしょうか。
私は……私は、9年間にわたるの長い片思いをやめるためにこの店に来た。

あれは、そう。
夏休みになる時だった。
凪部長がいつもの部活でこういったの。

「文芸部は、基本長い休みの日は活動しない。つまり夏休み中は、この部室は開かないものとおもってくれ」

このころは、まだ私も恋という感情が自分にあるなんておもってもいなくて、頼まれた晩御飯のおかず買いにいくのめんどくさいなぁとか、まったく違うことを考えてその話を聞いていた。そもそも、恋愛なんて向いていないと本気でおもっていたし、良くある恋愛小説のように好きな人と出会うなんてもっと高校生になってとか、大人になってからだっておもっていたから。

「といっても、みんなで参加しようとおもっているイベントはある」
「イベントですか?」

凪先輩は、チラシを見慣れた光景で黒板へと叩きつける。

「これだ!」

チラシ2枚。うしろのチラシは良く見えないが表側のちらしには、大きな文字で生徒会主催図書館整理!!と書かれていた。

「なんといっても、イベントは両日とも8月21日の日曜日! その日だけは遅くなってもいいように、みんな空けておいてくれよ」

嬉しそうに凪部長は言った。
とはいってもプールの指定日以外は、夏休みはわたしもひまなの。正直なところ街の図書館にでも行って好きな本を気の向くまま読みあさろうとたのしみにしていたくらいである。だからこうして夏休みに一緒に先輩たちと遊べるチャンスがあるのはとても嬉しかったわ。

「あの、部長? うしろのほうは何のイベントですか?」

2年の金城先輩が凪部長に質問した。すると、凪部長はそそくさとそれを見えないよう、いじわるそうに隠しこう言った。

「ナイショさ!」

この凪先輩というひとは、なんというか可愛い。男なのに3年生なのに、なんというかとても素朴で庶民的なひとである。ナイショといった後に、生徒会在籍の3人の先輩が、凪部長を取り押さえ、無理やりその隠したチラシを確認する。ところが、確認した瞬間に私を見つめて何かに納得したように凪部長にそれを返した。
振りほどくように3人から離れると、凪部長は笑いながら言った。

「な。スペシャルイベントだろ?」

私はそんな情景を頭に〝?〟を浮かべつつ見ていたのだ。
嬉しそうになんとなくそれを理解したように微笑む金城先輩。部員総勢6名。うちわけ、3年生3名と2年が1名。そして私の1名だ。早々と過ぎた1学期がはたちまち終わり、男子4名女子1名のゆったりと中学生の夏が始まる。
たった一回のイベントを楽しく待ちながら過ごすのは嫌じゃない。
日差しの強い中で着始めたスクール水着。更衣室の匂いと凍えるほど冷たい塩水。
夕方の縁側。溶けていく夕日を見ながら食べるアイスと扇風機の色。
膨大に出された宿題がだんだん減る達成感や、大好きだったおじいちゃんの墓参り。そして、ウザ過ぎる蚊との戯れ。
1日1日が淡々と心地よく過ぎていった。気がつけばあまり想像していた夏休みとは違って、図書館には幾たびも行かずに細かな雑日で私の夏休みが過ぎていく。

そして……。
私としては、一日だけだから全然気にしてなかったけれど、ほんとに気にしてなかったんだけど……。
カレンダーには大きく2重丸を書いていて。その21日の日曜日がいよいよやってくる。



続く>28話:《ここから見える情景》

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