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【別れの値段】2話:無常

朝目が覚めたとき、ぽっかりと心に穴が空いてしまった様。
いつの間にか寝ていた僕は肌寒い冬の静けさに目が覚めた。
僕の何がいけなかったのかをもう一度考えて目を瞑ると、昨日の彼女の顔が思い浮かぶ。
 
“別れ”というそれが僕に治す薬のない深い深い毒を残したのだ。

車に置かれた香水のにおい
ふたりで語り合った大好きなアーティストのCD
ペアで買ったリングが横たわり
借りたまま返せなくなったゲームとか本もまた行き場を失う。
君の欠片が今では存在のないものが……形だけを残している様だ。

「ねぇ……もぅ何もなくなっちゃったよ……」

いつもどおりの朝の鳥たちの声の中。
僕は、彼女との思い出の写真を綴じた小さなアルバムを横目にし、
それを開こうとせずに、あたかもそれが彼女本人であるかのようにそう独り言を口にした。

僕はやっと彼女が僕のすべてだったって事を実感し、くしゃくしゃに強く笑う笑顔とか、たまに言うつまらない冗談とか、一部となって焼きつき、未練は残った。

性懲りもなく僕はメールを入れる。

――昨日は…ごめんね
――僕は、すごく身勝手で
――すごく自分勝手で嫌な彼氏だったと思う

この文章を作り、また泣くのは僕が泣き虫だからではなくて
本当はけして書きたくないを終わりの言葉を送らなければいけないからなのだろう。

――いままで僕は、とても幸せでした
――最高の恋愛をさせてくれてありがとう
――君のことを悪く言うやつがいたら僕が必ず守るから
――安心していいんだよ
――君は幸せになれるからね

……。
……言葉もなく
保身とか、プライドが高いからこういう言葉を言ったんではなくて、
いい人であったと思ってもらいたいから言ったんではない。
あわよくば、戻ってきてくれたらいいなんてそういう期待を込めたわけでもないんだ。

他にも伝えたい言葉は、あるのだけれど
ただ僕は、彼女が付き合ってから始めて僕に見せたあの最後の
ほんとうに……辛そうで今にもどこか崩れてしまいそうな昨日の夜の苦しい笑顔が
 
ほんの少しでも明るく和らぐようならって
そんな最後の手助けができたらって、そんなことを考えたりした。

雲に架かる冬のさえ冴えとした空気の和橋が、不思議とさわやかに変わった朝の言葉。
彼女からの返信は、長く感じた5分後に静かに届いた一行。

ごめんね……のたった一言。


続く:第3話“こんな店…があったんだ…”
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